2012年6月23日土曜日

弾劾裁判と新大統領の誕生/El juicio político y nuevo presidente

太鼓を使ったデモ隊はよく見かける。賑やかで楽しい
いま、パラグアイでは歴史的なことが起きている。

先週の潜在する問題が噴出したCuruguatyの土地無し農民と警官隊の血の衝突を引き金に、様々な疑惑の中にある大統領の弾劾裁判が昨日から上院で行われているのだ。
南米共同体のUNASURもこの問題を重視し、クーデター監視団を送ることにしたという。

同僚が言うには、今回の出来事は後々パラグアイの歴史として記録されるべき大変な非常事態らしい。
なんでも大統領が罷免されるような出来事は、パラグアイの歴史の中で約80年前のチャコ戦争時と副大統領の暗殺事件のあった10数年前、そして今回とたった3回目のことだと言う。

大統領に対する国民の見方は、毎年でも変ってしまう日本の首相に対する見方と比較すると、大きな隔たりがあるようだ。
大統領が変るというのは、歴史的な大事件なのだ。
ーーーーーーーーーー
街は警官隊と交通規制だらけ(右上の「TOKYO」は南米企業
アスンシオンでは弾劾審判の行われている国会議事堂前に、各地から上京したルーゴ大統領を擁護するグループが集結し盛んに弾劾に反対するシュプレヒコールを叫んでいる。
一部では弾劾賛成派との間で、小競り合いもあった模様だ。
交通マヒはないようだが、バスの本数も30%ほど減らされているらしいし、このような政情不安時は出歩くことは控えるに越したことは無い。


様々な影響が出始めている。
近所のフランス文化会館でも昨日まで無料のコンサートが行われる予定だったが、フランス語クラスも含め無期限延期された。
今日、学校での寂しいAsado
国民が熱狂するサッカーの試合さえ、パラグアイサッカー協会が週末の試合を取りやめ、来週に延期する決定を下した。
あちこちの学校でも授業を行うが、出席は取らない方針という。


ボクのクラスも今日は授業があったが、半分にも満たないたった8人しか生徒が来なかった。
みんな今までの復習を各自自由にして、ボクも学生の写真処理やロゴ作成を手伝ってなんとなくブラブラ過ごした。
そして先週まで行われていたサッカー大会の準優勝を細々とAsadoで祝って、午前中で帰宅した。
ーーーーーーーーーー
辞めされられちゃったルーゴ前大統領
しかしルーゴ大統領は自分から辞めると今の所言っていないどころか、弾劾動議を出した議員を非難したり、弾劾裁判自体を違憲だと裁判所に申し立てたりしているらしい。

アスンシオンには武装警官を含む9000人の警察官が動員され、国会議事堂に近い場所ではフェンス等で交通規制され、通行できる場所でも身分証明証の提示を求められる事態となっている。
国会議事堂周辺のビルの屋上には狙撃手が配置され、不穏な動きに目を光らせている。
ものものしい・・。

大統領支持派と反対派の衝突以外に、あり得ないと思われるが大統領が自分の身を守るために軍を使うことも考えられるとのことで、弾劾裁判の結果が注目されている。
ーーーーーーーーーー
・・・と、ここでテレビで最後の審判が行われ、投票の結果、なんと大統領の罷免があっさり決まった!!
ルーゴ政権の終焉だ!
外では、すぐ花火が何発か打ち上げられていた。

罷免に怒るルーゴ支持の人々(テレビから)
その後ルーゴが最後の挨拶をして、おだやかに議会の決定を受け入れる旨とこれまでの感謝を表明し自宅へ帰って行った。
すぐに待機していた新大統領が両院議会で、生演奏付きで歌われた国歌につつまれて宣誓を行い、平和裏に大統領の交代が行われた。

議事堂前に集まっていた支持者が興奮して騒いで、警官隊が放水する場面などあったが、あまり大きな混乱も無く解散して行き、後には新大統領の誕生を祝う人々の緩やかな集まりがテレビに映し出されていた。

ボクのところにもすぐに海外からニュースを見たという電話や、JICAからの注意喚起の電話やメールがあった。
出掛けるのを控えてテレビをずう〜っと見ていたので疲れたが、なんだかお祭りのようだった。

パラグアイ新大統領のフェデリコ・フランコ
副大統領を務めていたフェデリコ・フランコが、1962年7月23日生まれというからまだ49歳の若い大統領となった。
任期は来年の8月15日までだそうだが、就任挨拶ではコネ根絶やエネルギー問題に言及してなかなか頼もしい印象だった。

ボクの語学力ではあんまり聞き取れなかったので、明日の新聞買って挨拶の中身をもっと見てみようと思う。
そしてなによりパラグアイの民主政治の歴史はずっとコロラド党で来て、中立派のルーゴに移り、今回74年ぶりのリベラル党の出身ということで、日本の民主党で見られたように手腕は未知数で不安要素もあるが、喜ばしいことだ。


しかし、下のCNNの記事にあるように今回は旧保守派が画策した既得権益者のクーデターだとの見方もあり、周辺諸国も認めていないようなので、知識の乏しいボクとしては喜ぶべきなのかどうか分からなくなって来た。
いずれにせよ世界的には歴史は民主化へと進むし、後戻りはできないので良い方向へ向かってくれる事を願う。

日本もODA資金が入っている以上よく分析して、この先もし一部の利益になるような不穏な動きだと感じたら、少しは発言や行動を起こしてもいいのではないかと思う。
大使館の分析が知りたい・・。
ーーーーーーーーーー
こうした大きな動きがある時に一市民としてパラグアイで暮らしているのは妙な感じもする。
世界史のビデオを見ているようで、タイムスリップした感覚まで覚えた。

◎日本でも報道されたようだ。(22日)
http://sankei.jp.msn.com/world/news/120623/amr12062310200006-n1.htm
こっちのほうが詳しい。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120623/k10013060531000.html

◎でもメルコスールなんかは、まだ認めて無いらしい・・(24日)
http://www.afpbb.com/article/politics/2885902/9164378?ctm_campaign=txt_topics
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120624/k10013067861000.html
http://www.asahi.com/international/reuters/RTR201206250001.html
どうやら、このCNNの記事が一番的確なようだ。
http://www.cnn.co.jp/world/30007085.html


2012年6月19日火曜日

土地無し農民の血の金曜日/El viernes en un sangriento enfrentamiento

警官が撃たれた衝撃的な写真
よく理解できていないが、ここに記録しておかなくてはいけない事件があった。
世界的なニュースになったという、先週の金曜日6月15日の「土地無し農民と警官隊の血の衝突」。

以下、まずJICA事務所からの注意喚起文面。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
カニンデジュ県における土地無農民騒動について

本日早朝、約200名の警官隊によってブラス・リケルメ元上院議員の所有地を不法占拠している土地なし農民「カルペロス・グループ」の強制退去が行われ、その際に武装した農民グループと銃撃戦になり、現在までに死者18名、負傷者80名以上の被害者が出る事態となっているとのプレス報道がありました。
内務大臣は、本件に関して新たな警官隊及び軍隊を投入することが決定され、事態の鎮静にあたることを発表しています。
一方、アスンシオンでは、本日夕方より緊急国会が開かれ、「緊急事態宣言発令」「内務大臣及び警察長官罷免」「ルゴ大統領への政治裁判」等について審議されることとなっており、その結果次第では、国会前等での農民やその他政治グループ等のデモ等の発生も懸念されるところ、各人においても十分な情報収集を行なうとともに、国会等や群衆のある場所には近づかないように留意願います。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
事件のあったCanindeyu県Curuguatyの位置
新聞によると、この衝突によって今日現在で警官6人と土地無し農民11人の計17人が死亡したという。
まだ見つかっていない農民の死体もあるとされ、もっと死亡者は多い可能性がある。

先日、民衆のデモやブラック・フライデー騒ぎで意外と先進的なパラグアイを世界に発信したが、この事態は腐敗した政治と混乱ある国情という印象を伝えることになった。
ーーーーー
この衝突はアスンシオンから約250km北東のCanindeyú県のCuruguatyというブラジル国境近くの村で起こったものだ。
JICAの通達にもある通り約200人の国家警察官が立ち退き命令を受けて、金曜日の早朝にテント等を張って住み着いてしまった農民たちを排除すべく投入されたのが始まりだ。

テレビの画像を見る限りでは、無抵抗な土地無し農民に一方的に警官隊が殴り掛かっているように見える場面が繰り返し報じられていた。
警棒で殴られ倒され追い立てられ、トラックの荷台に鈴なりに詰め込まれて運ばれていた。
その後、勾留して拷問が行われたとの噂もあるし、古い軍隊のようだ。

「Curuguatyは戦場と化した」と報じる新聞サイト
しかし農民側が先に、ゴム弾と催涙ガスだけで任務にあたっていた警官に発砲したとか、地雷のような殺人トラップを仕掛けていた等の報道もあるし、もしかしたら国家騒乱を狙うテロリストが農民に混ざっていたことが今回の惨事を産んだのかもしれない。


いずれにしても同じ国民同士で銃撃戦が行われて、20人近くが亡くなり、100人近くが負傷した大きな事件だ。
国務大臣と警察のトップが辞める事態に発展し、大統領の責任も問われているという。


とにかく金持ち元議員の土地だということでなんとなく農民の側に付きたくなるが、農民の中には、土地を手に入れたらすぐ売ってまた他の土地を占拠しに行くということを繰り返している現金目当ての輩も混ざっているというので、話しがややこしい。
ーーーーー
もちろん金曜日はこのニュースがトップで繰り返し放映されていたので、昼食でも同僚はテレビに見入っていた。
前から土地無し農民達は私有土地への侵入占拠を繰り返しており、頻繁に警官隊との衝突が起きているという。
そういえば、少し前にはイグアスでも日本人の農地で同じ問題が起きていた。

23日土曜、犠牲者への祈りが行われる
問題がややこしいのは政府が態度をはっきりさせないからだと、同僚は憤る。
土地取引関係の法整備を厳正にすれば、問題は無くなるということらしい。
しかし既得権益がからんでなかなか正義が進まないのは、どこでも同じだ。


グレーなところで利益を得ていて、そこそこの地位に就いている腹黒い人がいるんだろう。


それに加え、土地無し農民のリーダーが大統領の親戚だとか、ブラジルの資本家が土地無し農民に与えた土地を買い漁っているとか、様々な情報が飛び交っている。
ーーーーー
この事件、最後には軍も投入されて収拾したが、ショッキングな出来事だった。
パラグアイは南米一安全と言われていて普段安心しきっているので、この衝突事件は国境の農村地帯の出来事ながら一般市民も銃を持てるこの国の危険な面を、まざまざと見せ付けてくれた気がする。

2012年6月16日土曜日

日本語の歌詞をスペイン語で表記する/Cómo escribir los sonidos de idioma japones

本文と関係無く教室のデング熱注意張り紙
パラグアイ人の知人が「日本の素晴らしい歌を知っている。自分でも歌いたい」というので、「どんな歌?」と聞いてみたら、「君こそいのち〜♪」とワンフレーズだけ歌ってくれた。
なんでも昔世話になった日本人が歌っていたのだとか。
聞いた事があるけどかなり古い歌だぞと思いながら、「調べて教えてあげる」と言うと、「プリーズ!」となぜか英語で嬉しそうにお願いされた。

それで家に帰って「君こそ命」というフレーズからネットで探すと、どうやら川内康範+猪俣公章コンビが書いた「君こそわが命」という1967年の歌だということが分かった。
歌詞はネットで探すことができたし、音階もYouTubeで調べたら‪水原弘から始まり‪石原裕次郎‬、‪前川清‬、氷川きよし‬、坂本冬美あたりまで出て来て、すぐに分かった。
ーーーーー
また関係無く、元劇場というアスンシオン税務署
ではすぐに教えてあげようと、歌詞をローマ字に直して書いていたら、スペイン語圏の人向けには表記が難しい音があることに気が付いた。
たとえば、「汚れ汚れて傷ついて〜」の「よ」や「ず」とか、「信じてた〜」の「じ」とか・・。

「Yo」「Zu」「Ji」と書くと、パラグアイではだいたい「ジョ」「ス」「ヒ」みたいになる。
「YogoreYogoreTe Kizutsuite〜」や「Shinji te ta〜」のままだと、「ジョゴレジョゴレテ、キスツイテ〜」や「シンヒテタ〜」と読まれそうだ。
困った。
ーーーーー
それで、早速学校で同僚に聞いてみた。
すると、「io」「szu」「szi」と書いてくれたら読めそうだという。
なるほどね。

ついでに、気になる他の発音も聞いたので、この日記に記録のために書いておこう。

ヤ ユ ヨ = ia iu io
ザジズゼゾ = sza szi szu sze szo
ーーーーー
ガギグゲゴ = ga gui gu gue go
キャキュキョ= kia kiu kio
シャシュシェショ= sha shu she sho
チャチュチェチョ= cha chu che cho
ーーーーー
ニャニュニェニョ= ña ñu ñe ño
ジャジュジェジョ= ya yu ye yo (szia sziu szie szio)
ギャギュギョ= guia guiu guio
ピャピュピョ= pia piu pio
ーーーーー
ハヒフヘホ = ja ji ju je jo

これでスペイン語圏の人、少なくともパラグアイ人向けの、日本語表記はこわくない!

2012年6月4日月曜日

ブラックフライデーと民衆のデモ/Black Friday y Manifestación del pueblo

民衆の歴史的な勝利を報じる新聞サイト
スペイン語力が貧困なせいでよく分からなかったけれど、アスンシオンでは国会前に5000人以上と言われる多くの市民が、5月29日〜30日今週の火水曜に集まって抗議集会を行った。

同僚の話しでは(ボクにも分かるように簡略化して話してくれたところでは)、税金を来年に予定されている選挙スタッフ費用名目で大規模に議員が自由に使えることを目指した法案が成立しそうなのに対して、マスコミが名義貸しのような方法で実態が無いことに気付いて騒ぎ、それに民衆が呼応して行ったデモの一環のようだ。

とにかく金持ち議員に税金を無駄には使わせないぞと、上院議決を前に民衆が自主的に立ち上がったのはパラグアイでは初めてだということで、歴史的なできごとらしい。
そしてとりあえずは法案が否決されたとも聞いたので、民衆の勝利だし正常な民主主義が行われたということなので、ボクが居る時にそんなことが起こるなんてほんとに喜ばしい。

この集会については、当日JICA事務所から注意喚起があり「本デモは、先週木曜日に下院が承認した選挙最高裁判所に対する1500億グアラニーの予算拡張について、本日上院により協議されることが予定されているところ、これ以上公的な資金を政治家の好き勝手にはさせないという市民の意思を表し、本予算拡張が承認されないことを目的としています」と分かり易く書いてくれてあって、納得した。

しかし、こんなに国内で大騒ぎしているのにルーゴ大統領は同じ日に日本訪問をしていると新聞にあった。
重大な会議でもなく2週間のアジア各国への親善歴訪らしいから、チャコ地方が洪水で大変な時もいなかったことも含め、責任感の無い大統領だと思われても仕方無い行動だと思う。
ーーーーー
1億8000万ドルの売上だったと報じる新聞サイト
その2日後6月1日金曜には、今度は市場や中心街が人や車で大混雑だった。
エステ市に続きアスンシオンでも、「ブラック・フライデー」と銘打った警察の警戒網も敷かれた街を挙げての大バーゲンがあったのだ。
http://www.ofertasasuncion.com/

残念ながらボクは特に買うものが無いので恩恵に預からなかったが、家電や衣料を中心にかなり盛り上がったようだ。

たまたまプリンタインクを買いに行った電気屋でも、いつもは空いているのになぜか行列ができており、やっとインクを買ってみたらいつもの10%引きとなっていた。
周りの人はパソコンが目当てだったようで、メモリの量など詳細に長時間打ち合わせて大金を支払う様子が見られた。
もともと安い店なので、ブラック・フライデーでさらにディスカウントというのは、かなり魅力的だったろう。
ーーーーー
それにつけても、デモの様子はボクに強烈な印象を与えた。
日本では特別な人々がやる印象の強い政治批判のデモだけど、税金の無駄使いに対して一般市民が、いわばお祭りのようなノリにせよ、これだけ大勢集まって議会に圧力を掛けて、しかも議決が左右されるなんて日本で考えられるだろうか?

ヨーロッパでも民衆がはっきりと結果を求めてデモ行動して、財政危機対策を隠れ蓑に一部の金持ちを擁護するような緊縮策はノーだと叫んだ。
アメリカでもウォール街に集まった10何万人という人達が、格差是正を叫んだ。
アフリカでは、民主化デモが次々に飛び火した。
ーーーーー
FacebookやTwitterが主な呼びかけに使われた
実はボクは日本で「デモなんかしてもムダ」「煽動されて動いているだけ」「一部の人のパフォーマンス」などと、デモの様子を見ながら覚めて思っていたけれど、政治や経済界がうまくコントロールできないで暴走している社会の中で、苦しんでいる人達が呼びかけ合い立ち上がることは、とても自立した考え方だし民主主義らしいなと今は思う。

今回のことや世界のニュースで、デモは民衆の自由で平和的な自己表現であり、血なまぐさいクーデターに寄らず武器を持たない市民が世界を変える方法にもなり得る、と考えるようになった。

「After Office Revolucionario」などと英語名が付いたFacebookページからも世界の影響を受けているのが分かるが、パラグアイでもFacebookやTwitterが草の根的な呼びかけに使われており、インターネットの発達で特別な活動家じゃない一般の人達が行動し易くなっていることも知った。
逆に権力側がインターネットを利用して情報操作しようとする動きも出て来ているというから注意が必要だけれど、ネットの力が最大限に生かされているようだ。

ボクも自立した市民で世界を良くする一人でありたいからという理由で、日本に帰ったら日本語でよく理解して共感できる平和的なデモに参加してみようと思った。